⑲フユの大学受験

昨年、フユは某大学を受験しました。

そこは、高1の時にオープンスクールに行って一目惚れした外語大学で

英語を頑張ったのも、その大学で4年間を過ごしたいと思ったから。

 

大学はそこしか受験せず、落ちたら系列の専門学校に行く(断言)と言ってました、ガンコちゃん。

模試でA判定が出ていたので、高校の英語教師達からは、格上の有名大学も受験するよう勧められていたし

私は、受験はフタを開けてみないと分からないから、滑り止めの大学を一校受けておくよう忠告したけれど

フユは聞き入れませんでした。

 

大学全入時代の到来を前に、専門学校という選択はどうなのか…

同級生の多くは、比較的安全な指定校推薦で次々に大学から内定を貰ってきているのに…

 

私は

学校名より、学科や、何を専攻していたかが気になる方ですが

世間一般、周囲の声を聞く限りでは

専門学校より大学、そしてその中でも細かいランク付け、ブランド志向は未だ根強いように感じます。

今は見えないし、想像もつかないけれど、卒業後のこと。

何か、やりたい仕事が見えてきた時、諦めなければいけないのではないか…

選択肢の幅が狭くなるのではないか…

親として迷う所でしたが

 

フユの志願書を読んだ時、本人の目の前でしたが

涙がポロポロこぼれてくるのを抑える事が出来ませんでした。

 

今まで頑張ってきたありのまま、そしてこれからの事を、飾りのない、真摯な言葉で綴っていました。

年内の自己推薦入試と、来年初めのセンター、一般入試を受ける事を聞かされました。

 

 

試験当日

フユは朝5時半にオンラインを入れていました。

 

車で駅に送るつもりで起きてきたら、パソコンのある部屋からフユの声が聞こえてきました。

“ I’ll do my best ”

馴染みのフィリピン講師に軽くお礼を言ってから、スカイプを切り

歩いて行きたいから、とフユは一人で家を出ました。

 


 

合格発表の日は、ナツの11歳の誕生日でした。

実は、ナツのバースディケーキにフユの合格おめでとうのプレートを追加してもらおうと

いつもより大きめのホールケーキを注文していました。

私は職場でフユの連絡を待っていたのですが、かかってこず…

不安になって

昼休みを待って、ロッカールームから電話を入れました。

 

「ダメだった…」

世界中で一番かわいそうな女の子の声のように思えました。

そのあと、何度も、ごめんなさい、ごめんなさい…と謝るフユに(何故?誰に?)

「じゃあ、来年だね、今日はずっと泣いてたらいいよ。ケーキ食べようね」

出来るだけ淡々と話したつもりでしたが、電話を切ったあと、誰もいないロッカールームで声を殺して泣きました。

入試の朝、一人で駅に歩いていったフユの後ろ姿が頭から離れませんでした。